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兵庫県姫路市に住む川口夫妻は、約10年前、岡山県の中山間部で300坪の畑を購入し、独学で野菜と果樹の栽培を始めた。言うなれば大掛かりな家庭菜園、自前の市民農園といったようなもの。月に数回自家用車で2時間半をかけて、電気も水道もない山奥まで通い、荒放題だった畑を開墾し、農業を続けるには並外れた苦労と、そして何より楽しみとやりがいがある。
もともとは田んぼだった土地。だが、長い間放置されてきたため、一面身の丈ぐらいの雑草が生い茂っていた。不動産屋にも手伝ってもらって、ようやく雑草を刈り取ってみても、翌月行くとまた雑草だらけ。 「毎月行くたびに雑草が茂っていて、最初はどこから手をつけていいの?というぐらいで、4・5年間は毎回草刈ばかりしていたようなものです。おかげで草刈器や耕運機も上手に使えるようになりました。それにしても、草刈機や耕運機がない時代、みんな本当にどうしていたのかと思うと、昔の人はすごいなぁ、と思います。
土地を買い、野菜や果樹を育てることになったのは、決して唐突なことではない。姫路に移る前から、庭のプランターで白菜などの野菜を作っていたし、(社)中央酪農会議が運営しているミルククラブという会に入って、家族全員で牧場に見学に行ったこともある。
川口達夫さんは農機具メーカーに勤務。また、芳枝さんのお母さんや畜産大学に通う娘さんに教えてもらうことができるとはいうものの、そう簡単に農業の技術が身に付くわけではない。どんどんと疑問は増える。そんな時、偶然、兵庫県市川町でのボランティア活動のチラシが目にとまる。 「岡山にある畑から帰り道、たまたま立ち寄ったサービスエリアで、兵庫県ふるさとむら会員募集のチラシを見たんです。その中に、市川町での活動が載っていて、私達の畑のある環境と似ているのできっといろいろと学べるんじゃないかな、と思って参加しました。 「数年前、本当に小さかった樹がだんだんと大きくなって、実をつけるとそれはそれは嬉しいです。少々出来が悪くても、それは自分が作ったもの。すごくおいしいし、安心もできますしね。そろそろあの果物が収穫できそうだなぁ、次は何を植えてみようか、こんなことを考えているときが何より楽しいです。」 川口夫妻はとてもフットワークが軽い。どちらかが、これ楽しそうだからしてみない?と誘うと、じゃあやってみようと、二人で一緒に取り掛かる。
自然に触れ、農に親しむ暮らしは、二人をとても穏やかに見せる。来春は、何の種を蒔こうか、どんなプログラムに参加しようかと思いを巡らしながら、川口夫妻は忙しくも楽しい春の訪れを待っている。 (2004年取材内容) |